職業がんをなくそう!
「職業がんをなくそう集会」に70人もの参加者
6月11日13時より職業がんをなくそう集会がエルおおさか南館1023号室で開催され、5単産・8団体のほか専門家(研究者4人・弁護士5人)、個人など70人(マスコミ関係8人除く)が参加しました。
【基調講演】
1.日本における職業がんの実態
毛利一平医師(ひらの亀戸ひまわり診療所所長:日本の職業がんに関する疫学研究の第一人者)
業務上疾病発生状況と労災補償給付の2つの統計からは職業がんに関する感度が殆どゼロに近く、石綿以外の職業がんの認定数は10数件程度となっている。一方、実際の職業がんがどれくらいあるかについては国際的な研究で5%程度とされ、2005年イギリスのデータを当てはめると日本では男性1万人女性8千人が職業関連がんとなり、認定件数と比較すると大きな乖離がある。これらの背景には日本における職業病サーベイランス(情報収集)の遅れがあり、①医療機関からの職業病報告制度の未確立②職業病の過少報告・関心の低さ③職歴聴取・記録に関する不十分さがある(海外ではより良いサーベイランスシステムの研究が進んでいる)。このような現状を変えていかない限り、今後も職業がん事案が発生するであろう。「患者の職業は何か」という問いを持ち職業がんの掘り起こしをしていかなければならない。
2.有害物質による職業がんの救済運動を拡げよう
池田直樹弁護士(あすなろ法律事務所:石橋裁判主任弁護士)
石橋さんは染顔料中間体製造に従事し芳香族アミンなど様々な化学物質にばく露し、ジアニシジンを取り扱ってから20年後に膀胱がんを発症した(労災認定)。更に10年後口腔がんを発症して亡くなったがこの口腔がんが職業がんであるとして争ったのが石橋事件である。
裁判では、(1)ジアニシジン自身が口腔がんを引き起こすことの証明と(2)石橋さん自身がジアニシジンによって口腔がんを発症する個別因果関係の立証が必要とされる。
対象者が少数のため疫学による立証が難しく、類似の芳香族アミンによる口腔がんの多発症例を示したり、芳香族アミンの代謝物ががんを引き起こし代謝酵素が唾液にも認められることを示したが、判決では可能性は認めるが石橋さんしか発症していないので立証には至らないとされた。口腔がん発症者が石橋さんだけなのかは国が調査しないとわからないため何度も厚労省に要請したが国は未だ調査をしていない。
職業がん労災認定は、過労死事件に比べると過重な医学的証明が要求されている。過労死事件なら過重労働の事実を掘り起こすだけで良いが、職業がんはばく露の程度だけではなく、その物質がその部位とその人に発がんさせる医学的な立証まで問われており、被災者には過重な負担と言わざるを得ない。
がん登録に関する法律ができたが職業調査が組み込まれておらず、職業がんに関する情報が不足している。職業がんの被害を掘り起こすことは大変重要であり、患者と家族が行政に要請していくのが一番力がある。闘いを継続し認定を勝ち取り予防に繋げる運動が必要で、今日の集まりが出発点になる。
【石橋良信さんの職業がんを認定させる会第8回総会】
裁判には負けたけど・・被害者を増やしたくない!職業がんをなくす運動を繋ぎます!
経過報告、総括、決算報告が提案承認され、原告の石橋さんより長年の闘いの様子や支援に対する感謝が述べられました。報告集「ガリンコⅡ」に意見書や争点がまとめられています。
【職業がんをなくす患者と家族の会結成総会】
「真面目に働いてがんになる」=こんなことが許されていいのか!
昨年来福井県の化学会社で膀胱がんが多発し、労組を結成して職場改善に取り組んでいる田中康博さん(なくす会代表)が「二度と自分達のような被害者を出したくない」とあいさつされました。会場からは塗料・化成品製造、航空、印刷から職場の発がん要因や予防の取り組み、アスベスト争議団から共闘の訴え、研究者からWood dustによる上顎がん発症事例の報告がありました。職業がんに関する掘り起こしや広報、行政への働きかけを通して、職業がんをなくしていく決意を掲げた結成宣言が参加者で確認されました。
(堀谷)
「職業がんをなくそう集会」に70人もの参加者
6月11日13時より職業がんをなくそう集会がエルおおさか南館1023号室で開催され、5単産・8団体のほか専門家(研究者4人・弁護士5人)、個人など70人(マスコミ関係8人除く)が参加しました。
【基調講演】
1.日本における職業がんの実態
毛利一平医師(ひらの亀戸ひまわり診療所所長:日本の職業がんに関する疫学研究の第一人者)
業務上疾病発生状況と労災補償給付の2つの統計からは職業がんに関する感度が殆どゼロに近く、石綿以外の職業がんの認定数は10数件程度となっている。一方、実際の職業がんがどれくらいあるかについては国際的な研究で5%程度とされ、2005年イギリスのデータを当てはめると日本では男性1万人女性8千人が職業関連がんとなり、認定件数と比較すると大きな乖離がある。これらの背景には日本における職業病サーベイランス(情報収集)の遅れがあり、①医療機関からの職業病報告制度の未確立②職業病の過少報告・関心の低さ③職歴聴取・記録に関する不十分さがある(海外ではより良いサーベイランスシステムの研究が進んでいる)。このような現状を変えていかない限り、今後も職業がん事案が発生するであろう。「患者の職業は何か」という問いを持ち職業がんの掘り起こしをしていかなければならない。
2.有害物質による職業がんの救済運動を拡げよう
池田直樹弁護士(あすなろ法律事務所:石橋裁判主任弁護士)
石橋さんは染顔料中間体製造に従事し芳香族アミンなど様々な化学物質にばく露し、ジアニシジンを取り扱ってから20年後に膀胱がんを発症した(労災認定)。更に10年後口腔がんを発症して亡くなったがこの口腔がんが職業がんであるとして争ったのが石橋事件である。
裁判では、(1)ジアニシジン自身が口腔がんを引き起こすことの証明と(2)石橋さん自身がジアニシジンによって口腔がんを発症する個別因果関係の立証が必要とされる。
対象者が少数のため疫学による立証が難しく、類似の芳香族アミンによる口腔がんの多発症例を示したり、芳香族アミンの代謝物ががんを引き起こし代謝酵素が唾液にも認められることを示したが、判決では可能性は認めるが石橋さんしか発症していないので立証には至らないとされた。口腔がん発症者が石橋さんだけなのかは国が調査しないとわからないため何度も厚労省に要請したが国は未だ調査をしていない。
職業がん労災認定は、過労死事件に比べると過重な医学的証明が要求されている。過労死事件なら過重労働の事実を掘り起こすだけで良いが、職業がんはばく露の程度だけではなく、その物質がその部位とその人に発がんさせる医学的な立証まで問われており、被災者には過重な負担と言わざるを得ない。
がん登録に関する法律ができたが職業調査が組み込まれておらず、職業がんに関する情報が不足している。職業がんの被害を掘り起こすことは大変重要であり、患者と家族が行政に要請していくのが一番力がある。闘いを継続し認定を勝ち取り予防に繋げる運動が必要で、今日の集まりが出発点になる。
【石橋良信さんの職業がんを認定させる会第8回総会】
裁判には負けたけど・・被害者を増やしたくない!職業がんをなくす運動を繋ぎます!
経過報告、総括、決算報告が提案承認され、原告の石橋さんより長年の闘いの様子や支援に対する感謝が述べられました。報告集「ガリンコⅡ」に意見書や争点がまとめられています。
【職業がんをなくす患者と家族の会結成総会】
「真面目に働いてがんになる」=こんなことが許されていいのか!
昨年来福井県の化学会社で膀胱がんが多発し、労組を結成して職場改善に取り組んでいる田中康博さん(なくす会代表)が「二度と自分達のような被害者を出したくない」とあいさつされました。会場からは塗料・化成品製造、航空、印刷から職場の発がん要因や予防の取り組み、アスベスト争議団から共闘の訴え、研究者からWood dustによる上顎がん発症事例の報告がありました。職業がんに関する掘り起こしや広報、行政への働きかけを通して、職業がんをなくしていく決意を掲げた結成宣言が参加者で確認されました。
(堀谷)