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Wood dustと上顎がん

2016年08月05日
Wood dustと上顎がん
建設労働者の健康調査
Wood dust(木材粉じん)はIARC分類でグループ1(人に発がん性がある)とされています。
1980年代までは、Wood dustによる健康被害の調査がされていたようです。
近年では、建設労働者の作業環境の改善が進んできている実態もありますが、2000年以前には、安価な輸入木材が大量に輸入された時期があり、その当時の木材には防腐や劣化防止などのために有害物質が添加されており、加工時の粉じんを吸引した労働者に呼吸器疾患が増大していたものと思われます。
さらに、接着剤、塗料などの化学物質による影響も考慮すべきものと思われます。
海外ではWood dustによる暴露が長年の潜伏期間を経て上顎がんなどを引き起こし、職業がんであることの特定が進んでいます。
日本ではまだWood dustによる上顎がんの報告がありません。
日本で職業性上顎がんが発生していないのではなく、職業がんとして認識されないまま、私病として埋もれてしまっているのではないかとの疑念が払しょくできません。
建設労働者で上顎がんを発症された方々の調査、化学物質暴露と健康調査・実態調査が求められています。
(大塚)

休憩をはさんで、ROUAN塾第3期の開校式に続きます。
実行委員会を代表して前田さんがあいさつされ、平安さんよりこれまでおROUAN塾の経過と展望についてのお話がありました。ROUAN塾はただ聞くだけの座学ではなく自分たちの直面している課題を提示しそれをどう解決していくかという「思考と実行」が求められる点を述べられていたことが印象的でした。
『労働組合が労働安全衛生活動に取り組む意義』
化学一般労連顧問 堀谷昌彦
 今回の講演は3部構成です。
1.労働相談から労組を結成し職場改善を進めていった事例より(実践)
2.労組が労安に取り組む意義(本題)
3.「信念を持つ者の力」を知れ!(組織と人の関わり)

1-1.福井県膀胱がんの多発事案
 この問題は、一人でも加入できる合同支部のある組合員が昨年9月定期大会で「職場でがんが多発している」という訴えから始まりました。直ちに上部団体の関西地本は職場で取り扱われてきた化学物質とその曝露状況、発がん実態を調査し現地にて発がん者も参加する中、報告会を開催しました。その後も発がん者は増え、現在7名が発がんしています。
 労組結成後、団体交渉や日常活動を通じて職場改善を進めてきたこと、厚労省要請行動をしたこと、国会質問の要請を行ってきたこと、労組に入って一緒に職場改善をしようと他事業場へと宣伝を開始したことなどを紹介しました。
 また、6月11日に職業がんをなくす患者と家族の会を結成し、「これ以上私達のようなものを増やしたくない」と訴える田中代表の言葉も紹介しました。第2回職業がんをなくそう集会は福井で開催予定です。

1-2.三重県有機溶剤ばく露による健康障害の事案
 三重県にあるT支部に「職場の有機溶剤ばく露がひどく、何人も体調を崩している」という相談が持ち込まれ、関西地本は職場で取り扱いがあった化学物質とその曝露状況、健康障害の実態調査を行いました。
 職場で主として使用され曝露が激しかった物質は、ブチルセルソルブ、耐熱顔良、硫酸、苛性ソーダ、ジクロロメタン、IPA、MEK、サンドブラストによる粉じんなどでした。ばく露を受けた労働者には肺疾患、体調不良、体重減ほか様々な症状が現れていました。
 化学物質の適切な取り扱い方法と労基法・安衛法・労組法を学びながら、労組を結成し、団体交渉や安全衛生委員会で職場改善を進めました。
 また残業代の一部不払い問題や有機溶剤の地下浸透などの改善も労基署の力を利用する中、改善させた経験も紹介しました。

2-1.「労安取り組まんで、なにが労働組合じゃ」京都木下恵一氏語録
 健康に家を出て、健康に帰ってくるのが当たり前。職場における健康維持と増進は事業者の責務です。快適職場とは「行かないと損しちゃう」職場。闘い無くしては安全・快適はありません。
 木下さんが若いころ会社で事故があり失明してしまった労働者がおり、その親戚の方が当時役員をされていた木下さんに「この子の目を返してくれ」と迫られたそうです。以来、労安活動は労組がすべき最優先課題であることを訴え続け実行して来られました。
 また、労安活動は健全な労使関係を構築数る最強のツールなのです。労基法・労安法はアルバイトにまで適用されますし、安全衛生に関する要求はこちらが信念をもって問いかければ相手は避けることができません(誰でも事故や怪我はあかんと思っているから)。労安がしっかり定着しているところは、組合員が周囲のことを日常的によく観察して改善する文化が形成されているため、殆どすべての労働条件の向上につながります。これを「いいところは全部いい」と言います。

2-2.「労働組合の価値は予防してこそなんぼ」
 医者は患者を治し、弁護士は依頼者の権利を守る。労働組合は怪我や病気を予防し、権利を向上させることができる唯一の(法的)組織です。労組の主戦場は現場にあり。予防活動をより活発に行うことが重要になります。ひどい目にあった労働者がいたり、裁判で負けてしまったとしても、「悔しさは予防で晴らす」のが労組の本流です。また、どうしたらいいのか困った時はまずは可視化することが大事です。怪我や疾病が続いているのは経営者も恥ずかしく思ってます。

3-1.たった一人でも信念を持つ者の力
 福井の膀胱がんが多発した事業所の組合員が言っています。「田中さんがいなかったら、今でもあの酷い作業をさせられている。」たった一人でも信念を持つ者が持つ力というのは計り知れないのです。更に、労組が結成されれば仲間を守る闘いに継続性と発展性(横への広がり)が生まれます。マスコミも真面目に働くものの視点からこれはおかしいということは自信を持って報道できます。信念を持つものには人が寄ってきますし運動が広がります。

3-2.熱い焼印:義を見てせざるは勇無きなり
 私が入社する20年も前にビスクロにばく露され鼻腔がんに罹患していたKさんがいました。労災認定のために尽力している最中肺がんを原発し労災認定となりました。お見舞いに行ったときにKさんはやせ細り死を待つばかりで横たわっていました。娘さんからは「元気で会社に入ったのに、労働組合はいったい何をやっていたんですか!」と厳しい言葉が・・・これは中途半端ではできない。涙で何も見えなくなる中、熱い焼印を押された気持ちでした。
 「労安は10年やって一人前」今年ご逝去された辻村一郎同志社大学名誉教授の言葉です。立場を明確にして取り組んでいくことが重要です。
 「私はこっちで頑張ります」決意を固めた出来事でした。

3-3.リーダーシップと適材適所
 全員参加はどんな組織でも重要なことですが、リーダーシップについては深く掘り下げられない傾向があります。ところが組織を活性化させるにはこのリーダーシップというのはものすごく重要です。
 組合員が得意なことを一生懸命取り組んでいける適材適所を保障するには誰かが委員長なり書記長を「俺がやるよ」と言わなければなりません。これを交代でやってうまくいっている組織というは見たことがありません。一人でやり続けるのはしんどいですから複数人で助け合って幹部をやり続けることがとても大切なのです。ワンマン運営にならないように公私混同やハラスメントを予防することも重要です。私の行動基準は「機関紙に書けないことは全てダメ」。皆さんも何かわかりやすい基準を考えてみて欲しいと思います。

講演後、熟成紹介を行い記念写真撮影。
八木さんが閉会あいさつをされました。

その後、懇親会でおいしい料理をいただきながら楽しく会話を楽しみました。
カラオケも行っちゃいましたが、金さんがうまいのでびっくりでした。
(堀谷)

【サマースクール2016&第3期ROUAN塾】に参加してきました
 小倉の健和会複合施設地域交流スペースにて、7/30 13時より【サマースクール2016&第3期ROUAN塾】が開催されました。
 司会を務められた門岡さんから今後月1回集まって労安の会合を開くことを述べられ、永野労健連議長が職場で発生した労災のことを話され、そのような犠牲をなくすため労安活動を前進させて行きたいと開会のあいさつを述べられました。
 サマースクールの講演は、金直洙さん(韓国非正規労働センター)より
『日本と韓国における働くもののいのちと健康
 ~ブラック企業、本当の社長、そして殺人企業~』

がテーマです。
日本でも格差の拡大が深刻になっていますが、お隣韓国は更に格差拡大が進んでいます。韓国の最低賃金は2015年で5580ウォン(全国一律)ですからかなり低い。韓国の結婚集会サイトの広告には「エリート会員だけのための結婚情報を提供します」「相手と「階級」が合わない場合はトラブルが生じる可能性があります」等が見られるとのこと。
 かつては、雇用保障と年功賃金などによる優遇と無限の指揮命令権がセットだったが、今では低処遇・不安定雇用でありながら無制限な企業の指揮命令権に置くのが「ブラック企業」の特徴。韓国では更に外注下請け化によって責任回避がセットになり「殺人企業」が増えていることを指摘されました。
 日本で「ブラック企業大賞」が発表されていますが、韓国でも青年ユニオンが「ブラック企業」告発サイトを立ち上げています。
 また、労働組合の動きを見ると全体的に弱体化へと進んでおり、パククネ政権による労働改悪と労働運動の弾圧が進んでいます。
・2015年12月10日民主労総ハンサンキュン委員長が拘束され、2016年7月4日ソウル中央地裁は懲役5年を宣告(罪名は2015年11月の「民衆総決起集会」を主導したこと)。
・民主労総の核心組織である金属労組は造船業をはじめ製造票全般の大規模リストラ(6万人規模)を予告され、他の問題は手に負えない状態にある。
・2016年7月22日金属労組15万人の1日ストでも対応しない政府。
・財閥企業による外注下請け化が進み、労災死亡件数も毎年2400人。1万人あたりの死亡者数6.5(日本は1.9)⇒本物の社長に責任を取らせる必要がある。

韓国の危険社会・労働事情がよくわかりました。また、財閥企業の責任を問う共同行動が結成され頑張っている姿も教えていただきました。